待っています

 初出:1999/11/03 Stories Toy Box

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   待っています

   by Fangoln


 ものみの丘。
 もうそろそろ日も落ちてきたのでしょうか。
 あたりが赤く染まり始めています。
 風が、足下の草を揺らしていきます。
 少し寒くなってきました。
 5月とはいえ、まだまだ夜は寒いです。

「今日も……帰ってきてくれませんでしたね」

 つい思いが声に出てしまうのは、一人きりでいる時間が長かったからでしょうか。

「でも、私は待っていますから」

 少し前まで、私は待つこともしませんでした。
 帰ってこないものと……もう二度と会うことはできないものと勝手に決めつけ
ていました。
 勝手に決めつけて、勝手に自分の殻に閉じこもっていました。

 でも今は……

「おーい、天野ー」
「あぅー、美汐ぉ」

 私の親友、私のあこがれ、そして……私の希望。

「こんにちは、今日もお二人ご一緒なのですね」

 この二人に会わなければ、私は変われなかったでしょう。

「ああ、こいつから目を離すと、何するか分かったもんじゃねぇからな」
「なによぅ、祐一だって」

 いつもと同じ何気ない会話、何気ないじゃれ合い。
 でも私にはわかります。
 別れと再開を経験した二人に、何者にも揺るがされない絆があるのが。

「ふふふ、仲が良いのはいいことですね」

 私が笑うのを見ると、二人とも照れくさい表情を浮かべます。
 そんなところも、そっくりです。

「ところで天野……まだここに来るんだな」
「ええ。ここはいい場所ですから」
「そうよっ、真琴の生まれたところだもん、いいとこに決まってるわよ」
「そしてあの人も……ね」
「あぅ……」

 心配してくれているのがわかります。
 本当に優しくて。
 涙が出そうなほどに。

「大丈夫ですよ。私は待っているだけですから」
「でもよ……」

 心配そうな表情を浮かべる二人に、微笑んで見せます。
 うまく涙を隠せたでしょうか。

「私も、相沢さんを見習ってみることにしたんですよ」

 この二人が教えてくれたのですから。
 信じる、ということ。
 必ず会える、と信じることを。
 信じて待っていたからこそ、この二人は再びこうして一緒の時を過ごすことが出
来るのですから。

「ですからたまにはここに来ることにしました。でないと伝わらないですから」

 そしてまだ心配そうな顔をしている二人に、再度微笑んで見せます。

「でも今日は帰りましょうか。もう寒くなってきましたし」
「あ、ああ、そうだな。何か帰りに暖かいもんでも買って……」
「あぅーっ! 真琴肉まんがいいっ!」

 またお前は……と、いつものじゃれ合いを始める相沢さんと真琴。
 正直、ちょっと羨ましいです。

 私もまた、あなたとあんな風に話したい。笑い合いたい。じゃれ合いたいです。

 だから……待っています。必ず帰ってきてくれると信じて。


 待っていますよ。


-終わり-


掲示板用の後書き

 ども、ファンゴルンです。
「アシスタントのしっぽ真琴よ。今回は美汐なのね」
 うん。突発的に書きたくなったんだ。
「ふーん、珍しいわねぇ」
 理由はちゃんとあって……四季さんのページの美汐の絵を見たら、突然話が書き
たくなったんだ。
「いいの? そんなんでSS書いちゃって?」
 これから許可取る(^^;;;;;
「あぅー、いつもながらいい加減ねぇ」
 あと、たかとりさんの書かれた、POWER OF BELIEVE っていう話からもちょっと
影響を受けてる。
「信じる……ってこと?」
 ああ、やっぱり信じることは重要だよ。何においても。
「じゃあ真琴も、次は真琴のSSを書いてくれるの、信じてるからねっ」
 ぐはぁっ!
「あ……また倒れた。まったく……」


後書き

 掲示板用の後書きにも書きましたように、四季さんのCG、そしてたかとりさんのSSからイメージを受けて、書きました。
 そして、四季さんにこのSSを贈らせていただきました。
 ……邪魔になっていなければいいんですが(^^;;

 このSSも初出は『Stories Toy Box』です。


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