新婚旅行はカナダへ行こう! 〜待ち時間編〜

 初出:1999/10/21 Key SS掲示板 No.23266

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   新婚旅行はカナダへ行こう!〜待ち時間編〜


「……着いたね」
「……ああ、着いたな」

 二人呆然と立ちつくす。
 互いの手を堅く握りあって。

 あふれかえる英語とフランス語(だと思うけど、読めないからわからない)
 あたりを埋め尽くす、恰幅のいい白人。
 カナダへの玄関、バンクーバー空港についた俺たちは、ロビーで途方に暮れてい
た。

 名雪が困惑を隠そうともせず顔に出し、俺の方を向く。

「祐一……どうしよう?」
「うーん……乗り継ぎの飛行機の出発まで、まだ……えーと……2時間はあるな」
「だから……どうしよう?」」

 ここからエドモントンまで、さらに飛行機を乗り継ぐんだけど……。
 このまま2時間、なにもせずにぼーっとしてる、ってのもなんだかシャクに障る。

「せっかく色々店があるんだ、見て回ろうぜ」
「えー、でも日本語、通じないよ……」
「大丈夫だって」
「そうかなぁ」
「どこの国だろうと、客は客だ! 一番偉いんだ!」
「無茶苦茶だよ〜」

 そういいつつ苦笑する。

「お腹空いてないか? ほらあそこに、日本でもよくあるハンバーガー屋があるぞ」
「えー、わざわざカナダで、そういうのを食べなくてもいいよ〜」
「いや、ここは一つ、国による味の違いを確認してみようかな、と……」
「祐一、日本の店の味なんて覚えてるの?」
「……覚えてないな、そういえば」

 なにしろ、秋子さんの料理がうますぎるから、外食なんてほとんどしなかったし。

「でも、じっとしてても、時間の損だよね」

 そういって俺の腕に、自分の腕を絡ませる名雪。

「祐一、行こっ。ウインドウショッピング、だよ」
「あ、ああ」

 どうしたんだ、急に……。
 俺が怪訝そうな顔をするのを見て、クスっと笑う。

「祐一と一緒だから、だよ。何かあっても、祐一が何とかしてくれるって信じてる
から」
「ぐあ、いきなりそんなこと言うなっ! 恥ずかしいじゃないか!」
「大丈夫だよ、他に日本語分かる人、いないよ〜」

 俺が恥ずかしいんだって。
 ……まぁいいか。
 名雪も元気になったみたいだし。

 そして俺たちは空港の店を色々と見て歩いた。
 とはいっても大した店があるわけじゃない。なんというか……観光地の土産物屋
って感じだ。それでも、時間をつぶす役には立つ。

「お、あれアイスクリームじゃないか?」
「え? あ、ほんとだ、アイスクリームだよ〜」

 俺の指さす先には、日本でもよくある、アイスクリームの入ったケースがあった。
 店員がすくって、コーンにいれてくれるやつだ。
 なにより、コーンの山が、ケースの上に積まれている。

「イチゴの、あるかなぁ」
「お、おい、名雪……」

 止める間もなく、まるで引き寄せられるかの様に店に近づく。

「May I help you?」
「バニラ……チョコレート……ミント……ブルーベリー……」
「え、えーと、ジャスト ア モーメント、プリーズ」

 お店の人が話しかけるのも聞こえずに、品定めをする名雪。
 ……まぁアイスクリームは、どこに行ってもそう変わるもんじゃないからなぁ。

「……残念」

 肩を落とし、心底残念そうな顔をする名雪。
 確認するまでもなく、なかったようだ。

「ま、次の機会があるさ」
「うん……そうだね……でも……」

 一瞬迷ってから、顔を上げると、店員さんに顔を向ける。

「でぃす、ぶるーべりー、ぷりーず」
「OK, $2.15」

 店員さんは鮮やかな手つきて、ブルーベリーのアイスを盛ってくれる。

「And you?」

 え、俺?
 考えてなかった。
 でも確かに食べないのはなんか悔しいし。
 ざっと見回すと、一つ気にかかるのがある。

「じゃあ、メイプル、プリーズ」
「OK, $2.15」

 確か、メイプルシロップって、カナダの特産……なんだっけ?
 成田空港で両替したばかりのお金を払い、アイスを受け取る。

「おいしいよ〜」

 見ると、名雪は既に美味しそうにアイスを舐めていた。
 幸せそうな顔をみると、俺もなぜか嬉しくなってくるな。
 そう思いながら、買ったアイスを口に運ぶ。

「むっ、これはっ!」
「祐一、叫ぶと他の人の迷惑だよ」
「そういわずに、これを食べてみろって」

 そういって、名雪の口先に自分のアイスを突き出す。
 怪訝な顔で一口かじる名雪。

「あ、おいしい……」
「だろ?」

 口にすると広がる、芳ばしい様な香り。
 さっと潔く消えていく、程良い甘み。

「こっちもおいしいよ〜」

 そう言いながら、さらに二口三口とかじる名雪。
 ……ってちょっと待て!

「おいこら、これは俺んだぞ」
「だっておいしいよ〜」
「じゃあ、こっちのブルーベリーのを食わせろ!」
「ダメだよ〜。あっ、こんなにかじったぁ!」
「これで同じだろう」
「そんなことないよ〜、食べ過ぎだよ〜。じゃあわたしも……」
「ああっ! またこんなに食べやがって! 復讐だ!」
「わぁ、そんなにいっぺんに食べるなんて、卑怯だよぉ〜」
「何言ってやがる! 俺のなんてもうこれしかないじゃないか!」
「うー、わたしのももうこれだけ……」
「Well...」

 突然聞こえてきた日本語でない言葉。
 慌ててそちらを振り向くと……あ、店員さん……。

「Do you need more icecreams?」

 にこにこと笑いながらの一言に、思わず二人して

「「いえす!」」

 と答えてしまうのであった。

 ……最後に、名雪はさらに1つ食べたことを記しておこう。


-終-


解説、または後書き 

 前回から無茶苦茶時間が空いてしまったことをお詫びします。
 色々とあったんですよぉ。(オフ会に参加したり、そのレポートを書いたり(^^;;)

 今回は、ほのぼのな感じに仕上がったつもりなんですが、いかがでしょうか。

 ……最初は懲りずにらぶらぶにするつもりだったんですが……失敗しました(爆)
 で、しょうがないからほのぼのな方面に路線変更したってのはヒミツです(核爆)

 一応解説。

 このバンクーバー空港には、実際にメイプルシロップのアイスクリームが売って
ます。あっさりした感じで、実に日本人好みの味だと思います。
 ……でも、ブルーベリーのアイスクリームが本当にあったかどうかは、不明です。
 ちゃんとそこまで、みてなかったの(笑)


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