花見の日

[戻る]



    花見の日
      by Fangoln

「ふぅ。落ち着くなぁ」
「うん、落ち着くねっ」

 満開の桜並木。
 その下の遊歩道を、僕と真琴は肩を並べて歩いていた。

「まったく、みんな騒ぎすぎよぅ」

 ちょっと頬を膨らまし、そんなことを言う。もっとも声は笑っているのだが。
 でもまぁ確かに、みんなの壊れ方はいつにも増してすごかった。

 チャットのノリで萌えを叫びだし、眼鏡詩子にダー○ネスフィ○ガーで沈められ
るD2さん。(もっとも、二秒後には何事もなかったかのように復活していたが)
 同様に壊れを叫びだし、つっこみ栞ちゃんに生つっこみを喰らう蘭丸さん。(こっ
ちはきっちりヤられたらしく、復活に五分くらいはかかっていた)
 対抗して、つっこまれあゆあゆに生つっこまれを実行しようとするやすじんさん
と、それを阻止する来栖さん&いくみ。(おお、生漢チャの野望だ)
 珍しくお酒を飲んで暴走しだしたたかとりさんと、それに切れてたこなぐりにす
る攻撃性の高いアシスタント陣(くわばらくわばら)
 あまりのすごさに、疲れて真琴と逃げ出してきたのだ。

「何笑ってるのよぅ」

 ……いつの間にか笑っていたようだ。

「いやなに、まだみんな騒いでいるのかと思ってな」
「騒いでるに決まってるわよぅ」

 それもそうだ。みんなしてあれだけお酒を飲んだのだ。壊れないわけがない。
 それにだいたい、酒を飲まなくても壊れることのできる人材が揃っているのだ。
 でなかったら、チャットであそこまで盛り上がるわけはないだろう。

「真琴も一緒に騒がなくていいのか?」
「かんちゃんは?」
「うーん、パス。気力体力が続かなくてねぇ……」
「じゃあ真琴も、かんちゃんと一緒にいるっ」
「そうか。ありがとな」

 そう言いながら、頭をなでてやる。

「あぅー、やめてよぅ」

 くすぐったそうに目を細め、しっぽを振りながらそんなことをいう。
 あいかわらず、素直じゃないな。それがかわいいんだけど。
 なでた手をおろし、しっぽについた桜の花びらをとってやる。

「あ、ありがとっ」

 花びらの舞い散る中、再び共に歩を進める。
 そういえば……聞いてみるいい機会かな。
 僕は真琴の横顔をちらりとながめ、その思いを実行にうつす。

「なあ真琴」
「なに?」

 前から気になっていたこと。

「『春が来て……ずっと春だったらいいのに』」
「あぅ?」

 不思議そうな顔で僕の顔を見上げる。

「昔そんなこと、言ってたよな」
「うん……」

 真琴が普段見せないような表情を浮かべる。
 辛そうな表情かと思ったが、そうではない。
 それは……何かを懐かしむような――

「どうだ、その望んだ季節、春だぞ」
「うん……そうね」

 その目は遙か遠くを見ているようで。
 まるで、あの街を思い出しているかのように――

「さすがに、ずっと春のまま、って訳には行かないけどな」

 苦笑しつつそんなことをと言ってみる。
 違う。
 僕が言いたいのはそんなことじゃない。
 僕が言いたいのは――

「あぅー……」

 一瞬困った顔を浮かべたかと思うと、不意に真面目な顔になり僕のことを見つめる。

「えと……えーとね……」
「ん?」

 僕もそんな真琴のことを見つめる。
 一瞬絡まる視線。
 が、真琴は次の瞬間に目を閉じ、声をはりあげた。

「夏が来て、ずっと夏だったらいいのにっ」

 ……はぃ?

「あの……真琴? 今なんて……?」
「海に泳ぎに行ったり、山にキャンプに行くのよぅ。絶対、楽しいわよぅ」
「そ、そりゃあ、楽しいだろうなぁ」
「時間なんて絶対に、足りなくなっちゃうんだからぁ」
「そ、そうかな?」
「そうよ。だって――」

 不意に真琴が僕に微笑みかける。
 今まで見たこともないような……柔らかい笑み。

「かんちゃんと一緒に行くんだもん、時間が足りるわけ、ないわよぅ」

 一瞬停まる時間。

「――で夏になったら、『秋が来てずっと秋だったらいいのに』って言うのか?」
「あぅー、わかった?」

 顔を見合わせ、次の瞬間二人して吹き出していた。
 ひとしきり笑った後、真琴は改めて僕の方に向き直った。

「さっきのかんちゃんの質問の、答えになるかなぁ」
「ああ、十分だよ。……一緒に行こうな、いろんなところへ」
「うんっ、約束よっ」

 そのまま体をすり寄せる真琴。
 僕はその肩を抱き寄せる。
 そして顔を近づけ――

(ずべしゃっ!)

 盛大な音が聞こえ、一瞬にして身を離し飛び退く。
 そのタイミングは、打ち合わせをしてあったかのごとく、完璧だった。
 音のした方向を見ると――

『えぐえぐ、なの』

 スケッチブックを手にした小柄な女の子が転んでいた。
 頭には、猫耳が生えている。いつもはエココ帽子で隠しているのだが。

「えーと……バトマコさんとこの澪ちゃん?」

 コクコク、と転んだままうなずく。

「あっ、大丈夫?」

 今気づいたように、真琴が助け起こす。
 とりあえず、怪我はしてないようだ。

「で、どうしたの?」

 真琴が聞くと、澪は猛然とスケッチブックに苦情を書き出した。

『走ってたの』
『目の前で、ラブラブしてたの』
『止まれなくて転んじゃったの』
『道の真ん中でのラブラブ、禁止なの』

「あぅー……」
「ごめんなさい」

 僕らは顔を赤らめて謝るしかなかった。

「でも……どうして走ってたんだい? それに……いつのもエココ帽子は?」
『取られちゃったの。助けてくれる人、探してたの』

 泣きそうな顔でそんなことを書く。
 真琴と顔を見合わせ、宴会場所に戻ってみると――
 そこはやっぱりすごい有様だった。

 いすさんがエココ帽子をかぶって、千紗の同人誌を満足げに眺めている。(どう
いう経緯か知らないけど、大人げないぞっ)
 酔い潰れたちゅうびんさんが、自分のアシスタントの瑞佳に膝枕をしてもらって
いる。(永遠の世界に今にも逝きそうです……)
 幼い茜と幼い栞をつれたD-Glassさんが、幼い三人の子供を連れた学習院さんとし
みじみと何か語り合っている。(内容は知りたくもないが)
 半袖の小比塚さんに対抗しようとしたのか、なかむさんは片肌を脱いだあげく、
みんなに紅葉マークをつけられ悶絶している。(迂闊でしたな)
 やれやれ。

「あ、ファンゴルンさん、どこいってたんですか」
「しかもまこぴーと一緒に」
「怪しいなぁ」
「もちろん、野――!」

 坂瀬さんの叫びは、女性陣の総攻撃で途絶えさせられた。

「えーと……とりあえず……また乾杯だっ!」
「「「おーっ!」」」
「で、何に乾杯?」
「決まってるさ――」

 真琴の方を振り向き、にこっと笑う。

「春という季節に――乾杯っ」
「「「かんぱーいっ!」」」

 ――花見はまだまだ終わらない――


〜終わり〜


〜後書き〜

 4/2に関東で花見がありました。
 咲き具合はまだまだ二分程度、といったところでしたが、そんなことなど関係な
いほどの盛り上がりでした。
 まぁその記念、ということで(笑)

 さまざまな人名や、キャラクタ名が出てきますが、これはその花見を行ったメン
バーと、そのアシスタントたちです。
 詳しく知りたい方は……チャットの方においでくださいませ(笑)

 では……逃走っ(爆)

 

もしよろしければ、感想をお願いします。

お名前:(必須です。ニックネーム等でかまいません)

評価: 最高! 面白かった まあまあ つまらなかった なにこれ

コメント:もしよろしかったら一言二言……

  

  

※ここで入力した感想は、このページで公開されることがあることをお断りしておきます。


[戻る]