探し物はなんですか?

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●注意!
・このSSは、多少痛い表現が内容が含まれます。その様なSSが嫌いな方はご遠慮ください。
































    探し物はなんですか?
        by Fangoln


「うぐぅ、なかなか見つからないよ……」

 ボクはそう呟くと、空を見上げた。
 真っ青な空。
 天気はいいのになぁ。
 もうこうして何日、落とし物を探してるんだろ。

「もっとバッポンテキに見直した方がいいのかなぁ」

 何となく呟いてみる。
 えへへ、バッポンテキって、意味よく知らないけどなんか格好いいよね。

 ドシンっ!

「あぅーっ!」
「うぐぅ!」

 いたた……。
 うぐぅ、よそ見してたら何かにぶつかっちゃったよ。
 何か……違う、人だよっ。
 しかも転んじゃってるよっ!

「あ、ご、ごめん、大丈夫?」

 あわててぶつかった人を助け起こす。
 でもそんなに強くぶつかったかなぁ。

「あぅ……」

 あれ? ボクこの人、見覚えあるよっ。
 えーと……

「……真琴ちゃん……だっけ?」
「……?」

 俯いたまま、目だけでボクの方を見る。うう、なんか怖いよっ。
 それとも間違ってるのかな?

「えーと……真琴ちゃんだよね? いつも祐一君と一緒にいる……」
「うん……」
「ボク、月宮あゆ。祐一君の友達なんだ」

 よかったぁ、あってたよっ。
 前に見かけただけだもんね。
 あれ……でも……見かけただけなのに……何でボク、この人の名前知ってるんだろ。
 あれ? あれ? どこで……見かけたんだろ。
 何で祐一君と一緒にいるってわかるんだろ。

 思い出そうとして、真琴ちゃんのことを見つめてみたんだ。
 あれ? なんか真琴ちゃん、ふらふらしてる……。
 ふらふら……。
 ふら……

「わっ、どしたの!?」

 びっくりしたぁ、真琴ちゃん、突然倒れかかってくるんだもん。
 もう少しで支えるの、間に合わないとこだったよ。

「お腹……」
「え? お腹痛いの?」
「お腹空いた……」

 なーんだ。
 お腹空くと、力でないよねっ。
 でもボク、立てなくなる位お腹空いた人、初めて見たよ。

「じゃあ、たい焼き食べる?」
「たい焼き?」
「うん、これだよ!」

 懐からたい焼きの袋を取り出して開けると、中からいい匂いがあふれてきたよ。
 真琴ちゃんも鼻をひくひく動かして、匂いをかいでる。
 あはは、何だかイヌやネコみたいだよっ。

「いい匂い……食べたい……」
「じゃ、あっちの公園で食べよっ。座れるところがあるんだっ」

 そう言ってボクは、真琴ちゃんの手を取って歩き出したんだ。
 ほんのりとぬくもりが伝わってくる。
 あれ? 熱でもあるのかな……?
 顔も何か赤いし。
 …………。
 気のせいかな? 気のせいだよね、きっと。

     ☆  ☆  ☆

「おいしい……」
「ね、おいしいでしょ?」

 噴水のある公園。
 そのベンチに二人で腰掛けて、ボクらはたい焼きを食べてるんだ。
 真琴ちゃんも、ようやく笑顔を見せてくれるようになったし、ボクも嬉しいよ。

「でもどうしてこんなにお腹を空かせてたの? 祐一君の家に帰ればいいのに」

 そういったとたんに、思い詰めたような顔になっちゃった。
 うぐぅ、聞いちゃいけないことだったのかな?

「……探してたの」
「わ、奇遇だね、ボクも落とし物、探してるんだよ」

 そっか、真琴ちゃんも何か、探してるんだ。
 ボク、落とし物が何か、自分でもわからないんだけどね。
 ……ボクは一体何を探してるんだろう……。

「真琴、ぴろを探してるの」
「ぴろ?」
「猫。これくらいの大きさの」
「わぁ、いいなぁ」
「真琴の家族なのよぅ」

 そっか。じゃあいなくなったら不安だよね。
 ボクも……お母さんがいなくなった時はとっても不安だったもん。
 それからはずっと一人で……あれ? ずっと一人で……?
 ずっと一人でボク、どうやって暮らしてきたの?
 どうやって……?

「あゆ?」
「あ、え、えーと、な、なんでもないよっ」

 な、何を考えてたんだろ、ボク。
 普通に暮らしてきたに決まってるよ。
 それよりお話しようよ。

「そうだ、そのぴろちゃんの話、聞かせてよっ。そしたら、ぴろちゃんのいる場所、
助言出来るかもしれないよっ」

 それにきっと、ボクも知らない祐一君の話、聞かせてくれるよね。
 祐一君と一緒に住んでるんだしね。

「あぅ……そんなにたくさん、話、ないよぅ」
「かまわないよ、少しでも」

 そう。気をそらすことが出来れば、それでいいんだ。
 このままだと、また変なこと考えちゃうもん。

「うん……えーとね――」

 真琴ちゃんのお話は分かりづらかったけど、逆にそれが良かった。
 余計なことを考える余裕がなくて。
 でも……。

「――それで、歩道橋の上からぴろを落としちゃって」
「落とした……?」
「あぅっ、ちょうど下を通ったトラックにのっかったから、無事だったんだけど――」

 お話は続いていたけど……
 聞いていなかった。聞こえなかった。

『落とした』

 何でこんな言葉が気になるんだろ。
 なんでこんなにどきどきするんだろ。

 落とした――落ちた――落ちる――
 ぴろちゃんを――誰が――ボクが?
 歩道橋から――どこから――木から?

 嫌だよっ!
 何でこんな事、考えるんだよっ。
 だって……ボクはここにいるのにっ!

 ――じゃあこの映像は、何?
 高いところから見た街の景色。
 不意に回る視点。
 目の前に迫る白い地面――

 助けてよっ!
 助けてよ、祐一君!
 支えてよ、あの時みたいにっ!

 え……。
 あの時?
 ――――。

「ごめん真琴ちゃん、急用を思い出したよっ」
「あゆ?」

 思い出した。
 思い出したんだよ。
 思い出したくない物を。
 思い出さない方が良かった物を。

「ごめんね、また今度ゆっくりお話しようねっ」
「あ……」

 でも……。
 そうだよ、気のせいだよ。何かの間違いだよっ。
 また今度……そうだよ、今度会った時には、祐一君のことたくさん話せるよねっ。
 たくさん話したいよっ。

「またねっ」

 立ち上がって手を振ると、走り出した。
 目指すのは――




 そして――




「……祐一君」
「探し物、見つかったんだよ……」



〜終わり〜


言い訳
 ども、ファンゴルンです。

 ごめんなさい。
 ご覧のようにこの話は、あゆの話ですが、あゆのための話ではないです。
 なにしろ、真琴シナリオでのあゆの話、ですから。
 設定は1/25日。あゆが祐一の前から姿を消し、真琴が熱を出す日です。

 そもそも最初の予定は、あゆと真琴がKanon本編で出会っていたらどうか、という
のを書きたかった、というのがあります。
 もっとほのぼのした話にするつもりだったのですが、Kanonらしさ、というのを考
えていたら、このような話になってしまいました。

 Kanon本編ではあゆと真琴の接点はありません。
 だけど、あゆと真琴が出会っていたら……もしかしたら、真琴エンディング後、
真琴が帰ってくるのにあゆが力を貸してくれるのではないか。そんな妄想から、こ
のような展開になってしまいました。

 結果的にとはいえ、痛いようなSSになってしまい、自分でも公開しようか迷っ
たのですが、せっかくですし公開しようと思います。

 ちなみにこの作品、5月に仲間内で行った、SS談義に提出した物です。
 その時出た意見として、「盛り上がりが足りない」というのがありました。
 そのあと色々と考えてはみたんですが……すみません、僕にはこれが精一杯のよ
うです。


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