── Interlude 名雪

【金曜日・一】

 初出:2001/11/30

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 夢。
 夢を見ているみたいだよ。
 でもいつものふわふわした夢ではなくって──。
    一つの物語。
    小さな男の子と小さな女の子。
    出会いは偶然。
    でも毎日の逢瀬が想いを深める。
 あの時いつも夕方にいなくなるのは、こういうことだったんだ。
    そして別れ。でもそれは偶然の悪戯。
    森、大木、突風、そして……赤い雪。
 その先は……わたしも知っているよ。
    少年の心は闇に沈む。
    例え……幼なじみの女の子でも引き上げられないほど。
 いやだよ、もう見たくないよ。
    最後に……砕け散る……雪うさぎ──。
 もう止めてよ!
 そして……目が覚める。最後の瞬間に羽のような幻覚を網膜に焼き付かせ──。
    祐一君によろしくっ。
 幻聴をその耳に残し──。

 まるで漫画のように、ガバっと起きあがる。まだ夢を見ているようにボォっとする頭を振ると、辺りを見回した。いつもと何一つ変わることのない部屋が、カーテンの隙間から差し込む明かりに照らされている。たくさんある時計を見ると……まだいつもの起床時間には早い。
「けろぴー……へんな夢を見ちゃったよ」
 気づかぬうちに握りしめていたお気に入りのぬいぐるみを抱え直すと、一人呟く。
「でも、多分事実なんだよね。ホントに起きたことなんだよね」
 そのままぬいぐるみと一緒に、自分の肩を抱え込む。
「祐一に、教えた方がいいんだよね」
 気がついたように、パジャマの袖で頬を拭う。袖を濡らすのは、汗か涙か。
「でも……大丈夫だよね……祐一には真琴がいるから……」
 ちょっと顔を赤らめ、隣の部屋とを仕切る壁を見る。真琴に入れ知恵したせいで、一昨日は眠れなかった。そのことを思いだしたのだ。
「そうだよね。真琴が祐一を支えてくれる、よね」
 小さく笑みが浮かべそのまま上を見る。もちろん天井しかないのだが、名雪の目は遙か遠くを見ていた。
「ね、あゆちゃん──」


−終−


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