── Interlude 真琴&名雪

【火曜日・四】

 初出:2001/11/30

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 ダンダン、と誰かが階段を下りる足音が聞こえた。普通なら注意してないと聞こえないものだが、狐の耳を持つ真琴ならば造作もないことだ。今みたいに、漫画に集中してても十分に分かる。
 あの足音は──祐一。それに気づき、なぜか顔を赤らめる。それはどうも今まで読んでいた漫画に関係があるようだ。それは少女漫画、しかも恋愛系だ。愛する二人が最後は結ばれる。そんなありふれた漫画に、しかし真琴は溜息をついた。
 しばらく考えを巡らすと、意を決したように立ち上がる。勢いよく部屋を出ると別の部屋に向かった。──祐一の部屋ではない。そのドアには『なゆきの部屋』とプレートがかかっている。
 一度も入ったことのない部屋の前でしばし迷うが、そっとドアを開け中をのぞき込む。
「名雪……」
「あ、わ、え、ま、真琴、ノックしてよー」
「あぅーっ、ごめんなさい……」
「うん、次から気を付けてね」
 そういいながら名雪は、付け猫耳と尻尾を外して大事にしまい込む。先ほど北川から渡されたものだ。どうやら一人猫コスプレでご満悦だったらしい。もっとも真琴から見れば、ベッドで丸くなって寝ているだけだったのだが。
「それで真琴、どうしたの?」
 真琴にクッションを勧めながら、自分はベッドに腰を下ろす。真琴も周囲の時計を珍しそうに眺めながら腰を下ろすと、恥ずかしげに切り出した。
「あのね、────なんだけど……」
「え? えっ? えーっ?」
 その真琴の台詞は名雪に劇的な変化をもたらした。眠そうであった目が大きく開き、顔が真っ赤に染まる。
「あぅ、その、だから……」
 真琴の顔も十分に赤い。二人赤い顔でじっと向き合う。
 ──冗談……じゃなくて、本気なんだよね。真琴ってそういう子だし……。やっぱりここは『お姉さん』としてなんとかしなくちゃ。
 真剣に考える名雪。とはいってもその手の情報にそれほど詳しい訳ではない。早くも暗礁に乗りかかった時、先ほどの北川とのやりとりを思い出した。
「────なんてどうかな……ほら、さっき北川君も言ってたし」
「……えーっ!」
 その姿を想像したのであろう、真琴の顔が更に赤く染まる。
「あぅーっ、でも……はぅーっ、えーっ……」
 そんな真琴に、洋服ダンスから取り出した一着の服を手渡す名雪。
「ほら、これで完璧だよっ」
「そうかなぁ」
「大丈夫だよ、絶対。真琴可愛いもん」
「あぅ! 真琴頑張るよっ。ありがとう、名雪」
「うん、頑張ってっ」
 今一つ自信がなさそうな真琴だったが、名雪の応援によりやる気になったようだ。だが名雪は応援しつつもこんな事を考えていた。
(わたし……耳栓用意した方がいいのかな……)
 とにかく、このような怪しげな話があった事も知らず、祐一の夜は更けていくのであった。


−終−


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