── Interlude 名雪&真琴

【月曜日・四】

 初出:2001/11/30

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 祐一が天野を送っていった間のこと──。
 名雪と真琴が水瀬家のリビングに残っている。秋子さんは、真琴の寝る部屋を整える、と二階にあがったままだ。二人は何とはなしにテレビを見てはいるが、ちらちらと相手の方を覗いている。お互いに、何か話したいけど話すきっかけがない、という感じだ。
 結局先に我慢できなくなったのは、名雪の方だった。
「真琴……」
「え、なに?」
「さっきの約束。しっぽに触らせてっ」
「うん、いいよ」
 真琴は席を立つと、名雪のすぐ側に座り直す。名雪はスカートの下からのびたしっぽを、そっと両手で捕まえた。
「わぁ、ふわふわしてるんだぁ」
「あはは、くすぐったーい」
「あ、ごめんね」
「ううん、いいよ。でも人に触られるって、変な感じ……」
 目を細めて笑う真琴。名雪も顔にもそれが伝染したように笑みが浮かぶ。
「ねぇ、祐一にはもう触らせたの?」
「うん、もうひどいんだよ、祐一って。寝てるときにぎゅぅっと掴むんだもん」
「あはは、祐一らしい」
 言葉は笑いながらも、さっきまで眠そうだった名雪の表情が真剣なものに変わる。なんとか話題を目的の方向に近づけられたらしい。
「ね、真琴」
「え?」
 それは真琴にもわかったのであろう。少し不安げな表情になる。
「祐一のこと、好き?」
 突然の名雪の質問に、一瞬の躊躇もせず、
「うん、大好きっ」
 と答える。
「そう……わたしも大好きだよ」
「うん、知ってるよ」
 知らないのは祐一くらいだよ、というと二人から笑いが起こる。だがそれは穏やかな笑いではない。一本張りつめた線の上での笑い。
「だから、ね、真琴……」
「…………」
「もう……消えたりしないでね。祐一の側から、いなくならないでね」
「え?」
 驚いたように名雪の顔を見つめる真琴。だがそんな真琴の顔を真摯な表情で見つめたまま、名雪は言葉を繋いだ。
「祐一のことを支えてあげて。きっと祐一も真琴のことを支えてくれるよ」
「そんなこと……」
「できるよ。祐一を支えられるのは、真琴だけなんだよ」
 そういうと名雪は真琴から目をそらせ、上を見上げた。
「あの時……真琴が消えてから……祐一は抜け殻のようだった……。学校もずっと……一週間以上休んで、毎日日が暮れるまであの丘でぼぉっとしていたんだよ。
 その後、学校に行くようにはなってくれて、日常には戻って来たけど……でも気が付くといつもこうやって空を見上げていた……。
 わたしやお母さんや……学校の友達が色々と話をしても……結局昨日までそれは治らなかったんだよ……」
 そしてまた真琴の方を見る。悲しい微笑みとともに。
「わかる? わたしたちじゃ……励ますことはできても、支えることはできないんだよ。そしてそれが出来るのは……真琴だけなんだよ」
「でも……でも名雪はそれでいいの? 名雪も祐一のこと、大好きなんでしょ?」
「大好きだよ。だから……あんなに辛そうな祐一はもう見たくないんだよ……」
「名雪……」
「結局わたしは待つことしか出来なかった。七年前も……今も……」
 七年前、という時に大きく顔を歪ませる。辛い過去を思い出したように……。
「でも真琴は大好きな人のために帰ってきた。奇跡を起こして」
「あぅー……」
「そんなの目の前で見せられたんだもん。わたしも心の踏ん切りがついたよ」
「え?」
「わたしは祐一と真琴のことを応援するよ。だから絶対に幸せになってね」
「うん……ごめん……あぅ……ありがと……」
 泣き出した真琴を抱きしめる名雪、それはまるで本物の姉妹のようであった──。


−終−


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