約束


9月24日 掲載
12月27日 第1期改定






真琴が消えた。
まるで、最初っからいなかったみたいに……。
俺は、しばらくしてものみの丘を後にする。


「おかえりなさい」
家に着いた俺を最初に出迎えたのは、秋子さんだった。
俺はいつもの様に返事を返そうと思ったが、感情が上手く切り替えられない。
「……遅くなって、すいません」
「気にしないで下さい。ご飯……どうします」
いつもの笑顔で聞いてくる秋子さん。
でも、その笑顔は少し寂しそうだった。
「少し、1人にして下さい」
俺はそのまま返事を聞かずに階段を駆け上った。
階段を上りきると、下から秋子さんの泣き声のような声が聞こえる。
……きっと、真琴の事に気づいたんだろう。
秋子さんは真琴の事を、本当の娘のように思ってたからな。
俺は不意に、きつねだった頃の真琴と秋子さんが、出会っていたらと思い、二人のじゃれあいを思い浮かべた。
(きっと秋子さんは、俺が真琴を隠していた事を知ってたんだろうな)
そんな事を考えたまま、俺は部屋にもどる。



部屋に戻った俺は、ベットに身を投げる。
そして目をつぶり、さっき消えたばかりの真琴の事を思い出した。

俺の憧れだった真琴姉さん、その名前をつけて狐が真琴だった。

狐だった真琴

いきなり殴り掛かってきた真琴

マンガと肉まんが好きな真琴

いたずらばっかする真琴

そして……、消えていった真琴

他にも沢山の思い出がある。
あるが、ろくな思い出がないな。
まあ、どんな思い・・・。
「何か、真琴が悪い見たいじゃない!」
え!?
「……真琴…か?」
「そうよ」
「お前……どうして」
「そんな事、どーでも良いわよお」
「よくねーよ!俺が……俺がどんな思いで……」
俺は真琴の身体を抱きしめた。
確かに真琴だった。真琴は俺の目の前に存在していた。
それを確認した瞬間、俺の感情は爆発し、涙があふれる。
「……ゴメンネ、祐一」
「いいよ。でも、もう大丈夫なんだろ?ずっとここに居れるんだろ?」
「それは……」
「それは無理だよ」
「え……」
俺の後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。
誰の声か確信した俺は、後ろを振り向いた。
「あゆ」
「久しぶりだね、祐一君」
俺は返事をせず、軽くあゆを睨む。
勿論普通に接したかったが、今の俺にそんな余裕はない。
「どうして、無理なんだ」
出来るだけ感情を押し殺し、あゆに問い掛けた。
「俺は真琴と一緒にいたい!真琴だって……」
「あぅー」
真琴が困ったような声を上げ、俺の服のすそを引っ張る。
「祐一〜、あゆを責めないで……。あゆは悪くないから」
「あ……」
確かにそうだ……。俺にあゆを責める理由はない。
あゆと真琴はここにいる。もしかすると、あゆが真琴を連れてきてくれたのかもしれないし。
そうなら、あゆに感謝する事はあっても、責める理由はない。
真琴の事で我を忘れていた自分が少々恥ずかしかった。
「あゆ、悪かった」
「いいよ、それより話を聞いてくれる?」
あゆの声は真剣だ。俺もふざける気にはならない。
「ああ」
「祐一君、真琴ちゃんが狐だった頃の事思い出した?」
「ああ」
「真琴ちゃんは祐一君とあって色々な事を知ったんだよ。人を好きになる事、信じる事……、他にも沢山」
「うん、真琴は祐一にいろいろな事を教えてもらった。凄く楽しかった、……でも」
真琴は、視線をおろす。
そこには、哀しそうな表情の真琴がいた。
「でも、『寂しい』という感情を知らなかったんだよ」
真琴のかわりに、あゆが言った。
寂しい?俺がいなくなったからか?
「だから、俺は仲間のいるものみの丘に……」
「その仲間以上に、祐一君の存在が強かったんだよ」
「……」
真琴は何も言わない。
俺も、何も言えなかった。
子供だった俺には狐だった真琴の寂しさに気づかなかった、それがこの結果らしい
「寂しさを知らない真琴ちゃんは、祐一君への思いで苦しくなるのを祐一君のせいだと思って、祐一君をうらんだ。たとえ間違った形とは言え、祐一君に対する強い思いが真琴ちゃんを人の姿にしたんだよ」
寂しかった……、だから、いたずらをして俺の気を引こうと……。
どんな形であれ、ずっと俺の事を思って。
「強い思いが奇跡を呼んだんだよ」
奇跡。
「祐一君、真琴ちゃん、一緒にいたい?」
「うん」
「当たり前だ」
「じゃあ、願って」
願う?
「この人形覚えてる」
そういって、あゆは一体の人形を差し出す。
ボロボロになったその人形は確かに俺の記憶の中にあった。
「それは、俺が昔お前にあげた」
「そう、願い事をかなえてくれる天使さん」
もしかして、あゆの奴……。
「いいのか?」
「うん」
ごめんなあゆ、さっき怒鳴ったりして。
そして、ありがとうな。
「それじゃあ、祐一君」
その言葉と同時に、俺は真琴の事を強く願う。
「ボクの」
真琴
祐一
「三つ目のお願いは」
いつまでも一緒にいてくれ
もう離れたくない
「祐一君が」
春を一緒に迎えよう
祐一と、ずっと一緒に居たい
「いつまでも……、いつまでも……」
美汐も待ってるぞ
また、みんなにあいたい
「幸せでいてくれる事です」
大好きだ、真琴
祐一、大好き

パァァァァ……

願いが終わると同時に、部屋が光に包まれる。
俺はあまりの眩しさに目をつぶった。
「あぅぅぅぅぅぅ」
「うぐぅぅぅぅぅぅぅぅ」
二人に緊張感のない声が響く。



そして、俺が目を開くとそこには誰もいなかった。
「真琴!あゆ!」
まわりを見渡すが誰かが居る気配はなかった。
……夢だったのか?
(違うよ、祐一)
真琴?
何処にいるんだ?真琴。
(あのね、すぐには帰れないらしいの)
そうなのか?
(でも、大丈夫。真琴、すぐ帰るから)
(だから、待ってて。祐一)
ああ、わかった。
いつまでだって待っててやる。
(それじゃあ、またね)
またな。



いつまでだって待ってるぞ
だって、俺はお前が好きだからな
バカで、いたずら好きで、どうしようもないお前を、俺は好きになったんだから。
お前は、俺が必ず幸せにしてやる。
なぁ、真琴?一つ聞いていいか?
恋って奴はやっぱ『いつだって唐突』なのか?

(当たり前じゃない)

To be 真琴END



おまけ
「うぐぅ、ボクの事無視してる」
「あ・・・、あゆ!」
気づくと、あゆが俺の足元で半泣きしていた。
「どうしたんだよ、お前」
「え〜と、祐一君の幸せの中にボクも入ってたみたいだよ」
あゆが言い終わると、俺は二人を抱きしめた。
「家に帰るぞ」
その後、水瀬家において俺をめぐる女の戦いがあったのはまた別の話。


おまけ2
一緒に行った美汐ちゃんは?
「私はどうすれば」
置いていかれたようです。


後書き
ようやく終わった。
長いかな?今回。
ちなみに、こんなに真琴じゃあね〜などの意見は一切受け付けません。
だからそこ、石を投げようとしないで。
これでも苦労したんですから。
それでは、また次回。

12月27日
ファンゴルンさんに教えてもらい、いろいろ修正した上、少し内容を増やしまいた。
どうでしょうか?

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